アシッドの提供方法の模索段階
わずか数百マイクログラムの化合物で精神変容作用を発現するLSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)を販売する業者は、ユーザーが意図した以上の量を誤って摂取してしまう可能性を減らすために、長年にわたっていくつかの異なるアプローチを取ってきました。
アシッドを液体ゼラチンに混ぜて乾燥させ、「ゲル」と呼ばれる小さな塊にして販売したり、角砂糖(崩れてしまわなかったのでしょうか…)の上にLSDの液体を落として提供したり、小さなマイクロドットとして錠剤にしたり、エタノールや水などを媒介にして計量し希釈したりしてきました。
これらの方法はいずれも効果的ではありますが、神秘的なデザインが施された小さな正方形の紙を舌の上に置くという摂取の儀式に比べると、美的感覚が欠けています。
マーク・マクラウドによるブロッターアートの収集
しかし、これらは共通して、消費されるようにデザインされており、そして未知の膨大な量が消費されたのです。ベイエリアの美術史家、アーキビスト(蒐集家)、アーティストであるマーク・マクラウドは、カウンターカルチャーがウロボロスのように自らの歴史を食い荒らしていることに気づいた最初のアシッド愛好家の一人でした。
そこで彼は、ブロッターアシッドのシート(ブロッターアート)を集めて額に入れ始めたのです。1986年、サンフランシスコ・アート・インスティテュートで、マクラウドは初のブロッターアート・ギャラリー展を開催しました。この展覧会は、美術評論家からは賛否両論の評価を受け、法執行機関からは不本意な注目を浴びることになりました。
否定的な人たちによると、マクラウドのブロッターコレクションは コレクションはアートではなく、「それはアシッド(LSD)であって、芸術ではない」と主張しました。このような意見は、LSDを悪いものとして決めつける偏執狂的な主流派の影響を受けていました。
よくてもこれらの批評家は 「せいぜい粗悪なドラッグ・カルチャーに過ぎない」と主張するに留まりました。つまり「パラファーナ(道具)に過ぎない」と。しかし、マクラウドのブロッターシートにはもはや大量のLSDが含まれていませんでした。かつて強力な幻覚剤を含んでいたブロッターはLSDを分解する紫外線を浴びることで、不活性化されてしまっていたのです。
ブロッターアートの芸術形式化
これに対して、新たに認められたこのアート形式を擁護する人たちは、かつてブロッターに含まれていたLSDを分解することによって、マクラウドは疑う余地もなく、彼のコレクションを構成する作品の価値を高めました。
彼のコレクションを構成する作品は、かつてのアシッドの道具を、歴史的な意味を持ち、もはや違法ではない芸術作品に変えたということです。「これはアート(芸術)であって、アシッド(LSD)=違法なものではない」とマクラウドは主張したのです。
2021. blotterart.jp